1970年代末後半から80年代前半にかけてガソリンエンジン用タイミングシステムはそれまでのローラーチェーン駆動からタイミングベルト駆動へと怒涛の変更が行われました。その後1990年代から再びチェーン駆動に回帰するのですが1978年入社の私は20代から30代にかけてその激変の真っ只中にいました。その辺りの事情は別ブログ https://torakiji.hatenadiary.com 第1話~35話くらいに克明に書いてありますのでご参照ください。今回はその1990年代以降のタイミングチェーンシステムについて書いていきます。
再チェーン化の第一号はN社GA15型SOHCエンジンでP9.525シングルローラーチェーンでした。これはこれでかなり完成度の高いタイミングチェーンシステムでしたが、DOHC化でGA15Dとなる時に問題が生じました。それはIN-EXカム軸間距離がバルブ挟角の関係で80mm弱となってしまい9.525mmピッチのローラーチェーンではチェーンを2段掛けにせざろうえなくなり(写真参照)、コスト、スペース、重量、騒音で不利でした。しかしN社は一旦ほぼ全てのガソリンDOHCエンジンをこの2段掛けタイプで統一しました。しかし6.35mmサイレントチェーンのプロモーションが北米系チェーンメーカーB社主導で行われ、N社はサイレントチェーン採用に最終的に向かったのでした。
一方日本のトップカーメーカーT社はN社に遅れる事10年で再チェーン化となりましたが、その10年でチェーンを含めたカム駆動系やエンジン自身はかなり進歩していました。ローラチェーンはピッチが9.525mmから8mmに小型化され、カム軸にはVVTが付く様になりそのスペースが必要となりカム軸間距離は100mm近くまで拡大可能となりました。また燃料噴射は直噴(DI)が使われる場合が増えてエンジンオイルの中にススが混入する割合が増大しチェーン伸びやすくなりました。それらの事象を踏まえて、元々伸びに対してはサイレントチェーンは不利だった事もあり、T社はサイレントチェーン採用を諦めピッチ8mmローラーチェーンを使う事にしました。(カム軸間距離は96mmでピッチ8mmローラチェーンでの一段掛けが可能となった為)この基本思想は最新のTNGAシリーズでも踏襲れています。(T社がサイレントチェーンを諦めたの理由は初代ヴィッツ用1SZエンジンで多数のチェーン伸びクレームが発生した事も大きいのです。この辺りの詳しいいきさつは前述別ブログ第33話参照ください)
現在ローラ/ブシュチェーンをタイミングシステムに主に選んでいるカーメーカーはT社を初め4駆のS社、広島のM社、米国のG社、独のB社辺りです。逆にサイレントチェーンを主に選んでいるのはN社,H社,軽主体のS社で、それ以外はローラ/ブシュチェーンとサイレントチェーンの(欧州は更にベルトも)使い分けとなっています。
-続く-