プロローグ
タイミングチェーンの世界シェアで1,2位を争う日本のチェーン製造会社に22歳新卒で入社以来45年にわたりそれに携わってきたノウハウ(マニュアル的な内容は会社に残した)についてマニュアルで伝えきれなかった部分を書いていこうと思います。尚別のアカウントのブログ「嶋恭作の裏45年史」 https://torakiji.hatenadiary.com もその目的で書き始めたのですが脱線が多くて反省しており、もう少し技術中心でまとめ直してみようというものです。
また、私の所属していたチェーンメーカー視線ではなくて、エンジンに興味のある方々(カーメーカーやその他の部品メーカーを含む)視線でも書いていこうと思います。
Vol.1 タイミングシステムって何を採用すれば良いの?
前述のチェーンメーカーを退職して1年以上も経ち、その会社の株も売り払い完全にしがらみが無くなった今、この課題について第三者の立場で正直に書こうと思います。
タイミングシステムにはギア駆動、ローラ/ブシュチェーン駆動、歯付ベルト駆動という3種類の駆動方式があります。(電磁式開弁装置というのも存在したが、全く普及しなかったので除外します)私自身はチェーンメーカー所属だったのでチェーン駆動を推していましたが、本当はそうでも無い場合が存在するので、その辺りを説明していきたいと思います。
まず、そのエンジンが何を目指しているのか?がはっきりしないと適切な選定は出来ません。例えば何処(市場)で使われるのか?パワー重視なのか?燃費重視なのか?搭載されるクルマのレベル(大衆車、高級車etc)は?音についての拘りは?耐久性についての拘りは?コストについての要求は?ガソリンエンジンかディーゼルエンジンか?ガソリンでも直噴(DI)かMPIか?エンジンのメンテナンス状況は?(市場で期待されるオイル交換の状況)等です。それらの場合別にまとめてみます。
1) 市場はグローバルで、燃費重視、大衆車中心、音より耐久性重視、コスト重視、ガソリン車DI及びMPI、メンテナンスは普通レベル(メンテナンスマニュアルを大きくは逸脱しない)
この場合はローラチェーンかブシュチェーンが推奨となります。
2) 基本的に1)の条件だがMPIエンジンが主流であり、多少のコスト高は許容した上で静かな音を重視したいもの。またボディー剛性や遮音にコストがかけられない軽自動車や二輪車等。
この場合サイレントチェーンを推奨します。
3) ディーゼルエンジンで10万km毎のベルト交換音を厭わない。
この場合タイミングベルトを推進します。
実はこの1)2)3)を実際に全て実行しているカーメーカーが世界で1つあります。それは韓国の現代自動車である。彼らはガソリンDI車はローラ/ブシュチェーン、ガソリンMPI車はサイレントチェーン、ディーゼル車はタイミングベルトというような選定を行っています。
ー続くー